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第7回スポーツ医科学「スポーツドリンクで虫歯ができる?」

会報誌 第22号より

スポーツイオン飲料(いわゆるスポーツドリンク)は、運動選手の飲み物として普及している。

スポーツの時の多量の発汗は、体内の水分を失うために脱水を引き起こし、その結果、日射病・熱射病などの熱障害を引き起こす。その予防として、スポーツドリンクは症状を即効性に改善できる飲料として利用されている。

しかし、このスポーツドリンクが、虫歯の原因になっていることをご存知だろうか?

スポーツドリンクは一般に清涼飲料と呼ばれるジャンルに属している。組成が体液に近く、吸収しやすいことが特徴で、カロリーの抑えられたものが多い。カロリーが少ない、ブドウ糖などの糖分が少ないのならば、虫歯にならないはずなのだが、スポーツドリンクは違うのである。

「虫歯=糖分の過剰摂取・歯磨き不良」と思われている。これは事実であるが、虫歯になる環境はこれだけではない。「口腔内がどの程度、酸性になっているか」によって「歯が溶けるか否か」が左右されている。

糖分はあくまでも、虫歯の原因菌の栄養源であり、原因菌が作り出す有機酸(乳酸など)により、唾液・口腔内が酸性になるため、歯が溶け始めるのである。

従って、虫歯の原因菌の少ない口腔内では同じような生活習慣にも関わらず虫歯は少ない。つまり歯の表面が溶けてしまうのは、液体に糖分がどの位含まれているかということのみではなく、液体の酸性度がどの位かということによっても左右される。

この観点からスポーツドリンクをみてみると、酸性度を示すpHは約3.3。参考までに牛乳は中性の6.6、緑茶・中国茶も中性の6.4である。いかにも虫歯の原因になりそうな砂糖入りのコーヒー飲料ですらpHは6.5である。

飲料でスポーツドリンクに匹敵するほどの低いpHを示すものは他には炭酸飲料や乳酸飲料の約2.9があげられる。歯が溶け出すぎりぎりのpHは5.4と言われている。pH3.3という値は、理科の実験で登場する塩酸を希釈した液体に匹敵する強い酸性度である。

もちろん、人間の唾液には、この酸性度を中性に戻そうと緩衝する力がある。しかし、酸性度の強い液体が口腔内に頻回満たされ、その後、唾液の緩衝力にのみ頼り、うがい・歯磨きのような手段で歯を守ることができなければ、歯は長期にわたり強酸性の環境下に放置され、歯の表面が溶け出してしまう。

糖分を虫歯の原因菌が分解し産生した物質により唾液が酸性になり、結果、歯が溶ける虫歯とはまた少し違った形で歯が溶け始める虫歯になってしまうのである。

歯は、健全な体を維持するために大切な体の中の一器官であることはいうまでもない。一方で、多量の発汗を伴うスポーツでは、脱水症状の緩和・改善の手段として、スポーツドリンクの摂取は不可欠であろう。摂取のタイミング・量を見直す一助になれば幸いである。

恵愛歯科医院  荒瀬整孝